ポンプ性能 (改訂2版 05年9月)

初稿 だんなさん主宰の「ハーフインチ倶楽部」に投稿 05年1月



 ポンプのカタログに記載されている性能数値は、流量(最大で毎分何リットル流れるか、L/min)と揚程(最大で何mまで水を揚げられるか、m)の2種類が表示されていることが多いです。
 ただし、カタログ数値には落とし穴があり、数値が意味するのは下記の通りです。

 流量=揚程0時の最大流量
 揚程=流量0時の最大揚程

 誤解しやすい例として、カタログスペックで流量10L/min、揚程1.5mと表示されたポンプで実際に高さ1.5mまでくみ上げた場合に、流量が10L/min流れると考えてはなりません。最大流量10L/minという数字は、あくまでも揚程ゼロ時の最大流量です。高さ1.5mまでくみ上げたら、流量はゼロになってしまいます。

 カタログの数字だけ見ても実際の配管状態でどれだけ流れるかピンとこないので、一般的には縦軸に揚程、横軸に流量を表した性能曲線を使って判断します。

 PC水冷で定番のエーハイム製ポンプなどは、メーカーさんがきちんと性能曲線を公表しているので問題ありません。実測データもメーカー公表結果と大体一致しており、さすがに一流メーカーと納得できます。
 しかしPC水冷用の電圧可変型DCポンプだと、定格電圧で測定した性能曲線は一応公開されてますが、細かく電圧別に測定した性能曲線は公開されていませんので、自分で測定することとしました。


測定機材と方法は下記の通り

・流量センサ
 キーエンス FD-81 (測定範囲 1〜10L/min)
 4-20mA電流出力を1-5V電圧変換し、デジタルテスタでHOLD値を測定。3回平均をL/minに換算。


・圧力センサ
 キーエンス AP-12センサ(旧型、0〜1.0Kgf/cm2)
 キーエンス AP-80Aセンサアンプ(表示器)
 手動で約3秒間のピークHOLD値を3回測定。Kgf/cm2表示を直読し、3回平均を水頭cmに換算。


・流路構成

 リザーバ(または水没) − ポンプ − 圧力センサ(T字分岐) − 出口バルブ − 流量センサ − リザーバへ戻る





 写真のように、測定対象ポンプの吐出口からできるだけ太いホースを使って最短距離で圧力センサへ配管し、出口バルブを調節して任意流量時の吐出圧を測定することで性能曲線を得ました。

 水没可能なポンプは洗面器に沈め、吸込み抵抗を最少にした。
 水没不能ポンプでは大型リザーバと15mm大口径ホースで接続して配管ロスを少なくし、なおかつリザーバ水位をできるだけポンプ位置と同じ高さになるように調整して落差が生じないように留意しました。
 測定装置のホースおよびニップル類は可能なかぎり大口径のものを使用し、流路圧損を最少にしている。また、水温が極端に変化すると水の粘性変化によって流量曲線が変化するため、水温を20〜25℃に調整して測定した。

 可変電圧DCポンプはDC可変電源に接続し、供給電圧をテスタで実測調整。
また、一部ACポンプでは50Hz商用電源直結と60Hzインバータ接続の両方で測定している。

グラフ凡例
 縦軸 揚程(H) cm
 横軸 流量(Q) L/min

 グラフに描かれた曲線は、二次関数にて近似している。近似式から、任意流量時の揚程を算出できる。



性能曲線データ


Alphacool AP-900

 05年初頭の頃までは、国内調達可能な市販DCポンプの代表格だった。
 オープンインペラー型で12〜24Vで使用可能。12V動作時に900L/hrと紹介されているようですが、実測すると24V動作で900L/hrに届くかどうかの実力。カタログの表記ミスが疑われる。
 24V動作時に最大揚程340cmに達するので高圧損型水枕にも使用できるが、24V動作ではそれなりの騒音・振動を発生する。
 12V動作では静音性に優れるが最高揚程120cm程度とローパワーで、高圧損型水枕との組み合わせだと冷却性能で妥協を強いられる可能性もあります。
 また、新型クローズドインペラーポンプと比べると、揚程性能は明らかに劣る。そろそろ旧式化したと言うことでしょう。

(メーカー等への不満、電圧別の性能曲線データはきちんと公開すべき。最大流量と最大揚程を直線で結んだだけのいいかげんなデータは、公表しない方がマシ。)




Laing DDC

 水冷マッキントッシュに採用されたポンプで、最初からPC水冷用に専用開発されたクローズドインペラー型DCポンプです。
 定格12V時に最大揚程400cmを超え、ここで紹介するACポンプも含めた中で最高性能を示します。最大流量は7L/min程度と控え目ですが、多くの水枕で最適流量となる2〜5L/minの範囲で十分な吐出圧が得られます。逆に5L/minを超えると急激にパワーダウンするため、大流量型水枕で最大流量を得たい場合には不向き。
 7V以下の低電圧では始動不良となる場合があったので、動作範囲は8〜13Vと思われます。電圧調整範囲は狭いですが、定格の半分以下まで絞ることが可能です。また、ここで紹介した中では一番コンパクトなため、内蔵組み込みは容易です。




EHEIM 1048 (50Hz仕様)

 特にコメントの必要もない定番ACポンプ。陸上使用だとわずかに動作音や振動がありますが、おおむね静かなポンプと評されています。ここで比較した中では、本体サイズが大きい方。鑑賞魚飼育用だけに、耐久性や信頼性には定評があります。また定番ポンプだけに、リザーバ等のアクセサリが豊富で便利。能力的にはオープンインペラーらしく低揚程で、AP-900の12V駆動と同様に高圧損型水枕だとややパワー不足に陥る可能性があります。
 ここではポンプに一体装着可能なEH48Rリザーバ装着時のデータも掲載しました。リザーバの吸込み口がポンプ付属バーブよりも少し細いため、最大揚程は変化しないが最大流量は少し下がりました。たかがリザーバでも、いくらかの流路抵抗を示します。




Aquariumsystems Maxi Jet MJ-1000 (CoolingLab扱い品 Ver.1仕様)

 CoolingLab扱いの製品で、他と比べて低価格なACポンプ。
 能力はEHEIM1048よりも上で、西日本地域の60Hz動作時だと余裕も出てくる。騒音・振動はEHEIM1048と比べていくらか大きいが、そこそこ静かに使えるレベル。




 独断と偏見による用途別ポンプ選定

1.水枕1個構成でそこそこ冷えれば十分で、極端な静音を追求しない場合
 どれでも使えるが、この中で一番安いMJ-1000は手が出しやすい?

2.高圧損型水枕で5L/min以下の小・中流量域で冷却性能を追求する場合
 DDCがイチオシ。コンパクトで組込みも楽。

3.低圧損・大流量型水枕で流量勝負の性能追求をする場合
 Laing社の新型D5がイチオシだろうと思う?(未検証)

4.ポンプパワーを落としてでも静音性を追求
 ここで比べた中では、APシリーズの12V使用が一番静かだと思う。
Laing D5を絞って使った場合も静かかもしれない?(未検証)



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