お題4.NGワード



 「フロリナート」は某巨大掲示板の水冷スレッドではNGワード指定らしいですが…
 業務用冷凍装置とか電子装置の冷却用、古くはクレイ社のスーパーコンピュータの冷却液なんかに使われたフッ素系不活性冷媒の事で、フロリナートは3M社の商品名、類似品にはガルデン(ソルベイソレクシス社)とかイナートリキッド(三菱マテリアル)なんてのがあります。ここでは統一して不活性冷媒と書きます。

 特徴としては、非導電性(非常に絶縁性が高い)で、-100℃クラスの超低温から+200℃以上の高温域まで対応した各種沸点の製品が存在しています。
 ただの水だと4〜90℃あたりの範囲しか使えませんし、エチレングリコール等で不凍液化してもせいぜい-30℃程度までしか使えません。しかし不活性冷媒は、沸点グレードを選べば-100℃の超低温から+200℃以上の高温域まで利用可能と水よりも適用温度範囲が広く、なおかつ非導電性という特徴から電子装置とか産業用冷凍装置なんかで利用されています。

 昔のPC雑誌とか海外サイトで、低沸点型フロリナートにMB丸ごと漬けたという「ネタ記事」が掲載されたことがあります。冷凍機用の低沸点品を使ったから見る見る間に蒸発したらしいけど、明らかにグレード選択を間違えてますな。実験として意味をなさないし、値段高いのに勿体ないなぁ…(^_^;

 実際のところ、不活性冷媒でPC「液」冷をやったらどうなるか? どこにもマトモな実験報告は出ていませんでしたから、04年5月に自分で実験してみました。

 結果は、水と置き換えてそのまま使える。冷却性能は水と大差なしという結論です。
 本当に漏れても大丈夫か? という点に関しては、実際にお題1.特大水冷ペルチェ実験でMBへ直接ぶっかけてますが問題ありませんでした。

ハード構成
・エーハイム1048ポンプ+一体型リザーバ
・水枕Swiftech 12mmホース配管
・BlackIce 12cm薄型ラジエータ
 写真の通りのシンプルな構成で、総液量は約450ml。



使用不活性冷媒
 三菱マテリアル イナートリキッド EF-L174 流動点-50℃/沸点174℃



実験データ
 熱源 Athlon XP 200×12=2.4GHz Vcore=1.65V
 ファン回転数 約800rpm
 水冷時温度データ 室温25℃/CPU温度40℃ (Superπ3355万桁実行中)
 この実験をやった当時は液温計とか流量計を持ってなかったので、流量と液温データはありません… orz

 上記構成のまま冷媒を水から不活性冷媒に交換しました。

冷媒交換後の状況
・冷却性能そのものは水冷時とほぼ同じで、CPU温度は変化無し。

・イナートリキッドEF-L174は粘度や比重が水よりも大きいため、ポンプ始動時の空回り(キャビテーション)が水冷時よりも激しい。水冷だと最初に「ガッ」と音が出る程度で始動したが、イナートだと2秒間くらい「ガッガッガッガッ…」と空回りしながら始動します。
 始動してしまえば水冷時と同じで静かですし、見た目で水と同じくらいの流量で流れていました。

・有機冷媒なので静電気の発生が激しい。
 冷媒交換後、時々バチという音がしてシステムが固まる事がありました。どこか壊れたか?と思って調べたですが、部屋を暗くして観察するとポンプとケースの間で火花が飛んでました(^_^;
 有機冷媒を樹脂製ホースやポンプの中を流してるので、静電気が盛大に発生したようです。ポンプとケースを導線で接続してボディアースを取ったら、静電気問題は解決できました。



 不活性冷媒を使うメリットとしては、水冷の致命的弱点である電蝕、錆、漏液によるショートの問題が全面解決できます。これらの問題は「水」という冷媒の欠点であって、液体冷却という「方式」の欠点ではありません。

 不活性冷媒の欠点は、3M社の製品で1.5Kgで3万円と値段が異様に高い事です。イナートリキッドは1Kgあたり1万円で、3Mフロリナートと比べれば安かったですが…
 高い高いとは言え、水のように腐ったりしませんから回収して再利用できますので、他のパーツ類の値段と比べて極端にベラボーな値段とは言えないと考えてます。むろん、水みたいに使い捨てなんか絶対にできませんが…(^_^;

 値段が高いのは小口容器に限った話で、バルクで大口購入すれば一桁安くなるようです。そのくらいの値段でなければ、石油缶とかドラム缶単位で使用する業務用冷凍装置の循環冷媒なんかに使われませんね。小口で売られてるのはサンプル品とか試験用という扱いで、特に割高になってるようです。(小口品が極端に割高という価格体系は、化学品業界では当たり前)
 PCパーツ系商社あたりがフロリナート等を大口取り扱いして、1Lボトル入りでウン千円とかで小売りすることは可能だと思うのですが、どこかで出しませんかねぇ…

 最近になって、海外で「Fluid XP+ Non-Conductive Coolant」という非導電性の冷却液が発売されたようです。中身の成分が何なのかは発表されてませんが、非導電性だからフッ素系不活性冷媒と同じ使い方ができるようです。1ガロン(3.7L)で$100らしいので、国内でフッ素系不活性冷媒を小口購入するよりも安そうです。どこかで国内販売してくれないかな…



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